戦国武将に学ぶリーダーシップ

【武将】第9話 危機管理

小田原という地を知っておられるか?江戸時代は東海道五十三次の9番目の宿場町として栄えたもんじゃ。何せ天下の険、箱根が目の前じゃ。越える前と後に休んだり泊まったりする人で大賑わいじゃ。

そうそう、小田原宿と言えば外郎(ういろう)売りが有名じゃな。今もまだ営業を続けとってな、創業500年を越えておる。すごいもんじゃ。あとはやはり、かまぼこじゃな。うーん、板わさを食べながらキュッとやりたいのぉ!

さて・・・。

こたびはこの小田原に本拠地を構えておった戦国大名、北条家の話じゃ。初代早雲公から5代氏直公に渡る約100年間、関東の雄としてその名を馳せた。早雲公が戦国時代の幕を開け、氏直公のときに豊臣秀吉公の小田原討伐に遭い滅亡、戦国時代に幕が降りたと言われておる。まさに戦国時代を駆け抜けた一族と言えような。

その北条家2代当主、氏綱公が死に臨んで書き置かれたと言われる教訓状があっての、そこに次のような一節がある。

「大将から侍にいたるまで、義を大事にすること。義を捨てて国を切り取れたとしても、後世の恥辱を受けるであろう。天運が尽き果てて滅亡したとしても、義理にそむくまいとさえ心得ていれば、末世にいたってもうしろ指をさされることはないだろう。昔から天下の政治を執るほどの者でも、一度は滅亡の危機はあるものである。人の命はわずかな間であるから、醜い心がけがあってはならぬ。

昔の話を聞いても、義を守って滅亡するのと、義を捨てて栄華をほしいままにするのとでは格別の相違があるものだ。大将の心がけがこのようにしっかりと定まっていたならば、その下に使われる侍どもは、義理を第一と思うものである。それにもかかわらず、無道の働きをもって名利を得た者は、天罰ついにまぬがれがたいと知るべきである」

最近この「義」ということを忘れた者が多いと思われぬか?今の言葉で言うと「倫理感」とでも言おうかの。

たしかに苦しいのは分かる。じゃが、目先の利益に走って世間のそしりを受け、それこそ滅亡する組織が多いことは、昨今の情勢を見ていれば明らかであろう。

このところ大災害が多く発生しておるのは承知のとおりじゃ。その教訓として普段からいざというときのための備え、すなわち危機管理が大事じゃと言われておる。それももちろん大事じゃが、わしはそれ以上に、この「義」が大事だと感じておる。

すなわち「お主はいざというときに助けてもらえる存在か?」ということじゃ。普段からそのように生きておるか?経営しておるか?ということこそ、本当の危機管理ではないかの。裏切り骨肉の争いが常。手段を選ばず切り取り次第でいくらでも領土を拡大できた戦国大名が「義」を第一に考えよというこの言葉、よくよくお考えあれ。

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