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【武将】第34話 先を見据える

豊臣秀吉殿が小田原北条氏を滅ぼして天下人となって後の話じゃが、奥州の葛西・大崎で一揆が発生した。

この一揆について、伊達政宗殿がその首謀者であるという声が挙がったことから、秀吉殿は政宗殿を呼び出して糾明することになった。

秀吉殿の手元には、政宗殿が一揆を扇動したという証拠の書状もあった。
詰問された政宗殿は証拠の書状は偽物であり、濡れ衣であると言い切りおった。

本物の我が書状であれば、鳥の花押の目に針で開けた穴があるはずで、この書状にはそれがないからだということがその理由じゃ。

それならと秀吉殿は他の政宗殿の書状を取り寄せて調べてみると、確かに針の穴が開いておったため、赦されたとのことじゃ。

まあ実際のところ、裏で糸を引いておったのはやはり政宗殿ということのようじゃが、それを堂々と濡れ衣であると言い切る度胸もさることながら、政宗殿のまことにもってすごいところは、いずれこのようなこともあろうかと、前々から普段の書状に針で穴を開けておった細心さと、先の先を考える思考力ではないかの。

“想定外”のことが起こると人は思考や行動が止まってしまいがちじゃ。いわゆるパニックというやつじゃの。そうなると人は冷静なときには絶対にとらぬであろう行動を取りかねん。まあ、それがその者の本性であることも多いがの。

政宗殿は事が露呈して秀吉殿に詰問されることを想定しておったからこそ、予め針の穴を開けておくことが出来ておったのじゃろう。

もし想定しておらねば、言い逃れもできずに命運も尽きていたやもしれぬ。

先の見えぬ混迷の時代ではあるが、見えないからこそよく目をこらして、心を開いて先を見る努力を怠っては
ならぬのじゃ。

先を見据えて、今やらねばならぬことは何か、必要なものは何か、それをよく考えて行動に移していかねばならぬ。

忙しゅうてその日の仕事に追われ、先のことなど考える余裕などないと言われる方もおろう。されど、ただただその日の仕事に追われておるだけでは決して未来は開けぬぞ。特に上に立つ者ほど未来のことを考えねばならぬのじゃ。

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