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【武将】第44話 木偶の坊

「のぼうの城」という映画をご存知か?戦国好きならご存知であろうの?

秀吉殿による天下統一最後の戦であり、この戦で戦国時代が終焉したと言われる小田原征伐。小田原城と言えばかつて戦国最強と謳われた信玄殿、謙信殿をもってしても落城せなんだ難攻不落の城じゃ。

この小田原城の堅牢さは城自体の強さであることはもちろんじゃが、そもそも籠城戦に欠かせぬのが、後詰めと呼ばれる援軍じゃ。

城を囲む敵の背後や側面からの援護攻撃があってこその籠城戦なのじゃ。後詰めの期待が持てぬ城は落城を待つのみと言っても過言ではなかろうて。

じゃから大名は家臣の籠もる城が攻められた際には、何を置いても救援に駆けつけねば、家臣を見捨てたことになり、一気に信頼を失ってしまうのじゃ。信頼を失ったリーダーがリーダーでなくなるのは今も昔も変わりはせぬ。

北条氏の本城、小田原城の周りにはいくつもの支城があっての。その各地に広がる支城が本城の大いなる力になっておったのじゃ。

それでじゃ、小田原征伐の際の支城のひとつ、忍城における攻防を描いた映画が「のぼうの城」なのじゃ。

主人公「のぼう」こと成田長親殿は、武術はもちろん、田植えもろくに出来ぬ役立たずの木偶の坊。
じゃが、その「のぼう」をトップに据えた忍城は、石田三成殿率いる豊臣方の2万人とも言われる大軍勢による猛攻をわずか500人程度の家臣と農民の力で退けたのじゃ。

もちろん退けたと申しても、これだけの軍勢の差はいかんともしがたいものがあるでの。本城である小田原城が陥落するまで耐えた、と申すのが正確であろう。されど、北条方の支城で墜ちなんだのは、この忍城のみじゃというから、その奮闘振りは知れようて。

ここに描かれておる長親殿の姿をリーダーシップの観点から考えると、大切なことを様々学ぶことができるが、その最たるものは「リーダー自身が有能でなくとも組織として成功をつかむことはできる」
ということじゃ。

そしてそのために必要なことは、何よりもあの者の申すことなら、あの者のためなら、と思われる「徳」を備えた人間になることじゃ。

ただ、「徳」は上辺だけ着飾るものではない。出来ぬことは出来ぬ、分からぬことは分からぬ、怖いものは怖い、と、己を晒す勇気も時には必要じゃ。裸の己に存在するものこそが本物の「徳」なのじゃ。

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