貴殿は、仙石秀久殿をご存知か?
秀吉殿最古参の家臣であり、そのなかでいち早く大名に出世したという人物じゃ。
実はわしも偉そうなことは言えぬが、秀久殿を知ったのは、彼を主人公にした「センゴク」という漫画を読んでからじゃ。
もちろん娯楽として楽しむところもあるがの、漫画と思ってバカにするなかれ、信長殿や秀吉殿、家康殿などそれぞれ特徴あるリーダー、あるいはその元で働く秀久殿ら武将の価値観、苦悩、葛藤、喜び、決断、展望、思考などさまざまなことがよく描かれておってな。リーダーシップを学ぶ良い題材にもなると思うておるのじゃ。
さて、その秀久殿じゃが、一兵卒から戦功を重ねて大名に出世はしたものの、秀吉軍九州征伐の際の島津家との戦において大敗を喫し、軍監というリーダー的立場でありながら敗軍をまとめることもせずに仲間を差し置いて逃げ帰ったとのことじゃ。
そもそも秀吉殿からは島津家を足止めするために長期戦に持ち込むよう指示されておったにもかかわらず、攻め入って短期で大敗したということもあり、この戦の後、秀久殿は改易のうえ高野山に追放されてしまうのじゃ。
一兵卒から大名にのぼりつめ、出世街道まっしぐらと思いきや、思わぬ事態に陥り一気に失業じゃ。
人生、失敗はつきものじゃ。その失敗を次への糧にしてこそ人は成長していくものじゃ。
我が国の宇宙開発・ロケット開発の父と称される糸川英夫殿は「人生で大切なのは、失敗の歴史である」と申されたそうじゃ。ロケットを宇宙に飛ばすなど、まさに失敗の積み重ねから生み出された成功じゃろうて。じゃから失敗は単なる過失ではのうて、成功へと導いてくれる成果なのじゃ。
リーダーは失敗を単なる個人の責任追及、マイナス評価のための事象と捉えず、その因果をよく調べ考えて、未来につなげていかねばならぬのじゃ。
ただしじゃ。失敗にも種類がある。しても良い失敗とそうでない失敗があるのじゃ。リーダーはその軸をしっかり持たねばならぬ。
指示を守らず敗退、仲間を差し置いての逃亡という大失態は、軸を揺るがすに十分の理由であろう。泣いて馬謖を斬らねばならぬのもまたリーダーの務め。個人的な情を思えば、秀吉殿の心中いかばかりか・・・。
一方の秀久殿じゃが、実は人生これで終わるような輩ではない。大失敗後のこれからがまさに秀久殿の真骨頂なのじゃ。
さてさて、長くなってしもうた。あとは次回に譲るとするかの。