長谷川孝のブログマガジン

【武将】最終話 最初の一歩

ついにこの日が来てしもうたの。此度で48回目。

最終回じゃ。短いようであり長いようであり・・・。今までお付き合いいただきかたじけない。あともう少しだけお付き合いくだされ。

貴殿は温泉と言えば、どこを思い浮かべられる?わしはやはり我が本拠地小田原からすぐの箱根じゃな。

その箱根の一角に仙石原と呼ばれる地域があっての。秋になると黄金色に輝くススキが野原一面に広がり、それは幻想的な雰囲気を醸し出すところじゃ。

この仙石原という地名じゃが、その由来が実は仙石秀久殿にあるとも言われておるのじゃ。出世街道まっしぐらから一転、改易、追放という憂き目に遭った秀久殿じゃったが、それでは終わらぬ。

時が流れて秀吉殿の天下取り最後の戦、小田原征伐が始まると、秀久殿は追放の身でありながら浪人を集め、手勢を組織し、家康殿に請うて秀吉軍に陣借りという形式で参戦したのじゃ。

陣借りとは、手弁当で戦に参加する、いわばボランティア軍のようなものじゃ。たとえ戦功があったとしても、恩賞に預かれるとは限らぬうえ、手弁当じゃから武器や兵糧の配給も覚束ぬ。

秀久殿はそれでも参戦して死にものぐるいで戦い、抜群の槍働きによって軍功をあげ、その働きが秀吉殿に認められて許され、結果、大名に復帰することができたのじゃ。

先の仙石原の地名はこのときの秀久殿の活躍ぶりに由来するそうじゃ。

かつて信長殿の勘気に触れて出仕停止、浪人となっていた前田利家殿も信長殿に無断で戦に参戦し、武功をあげて帰参を許されるという出来事があった。

何事も事を為す前からあきらめて「どうせ・・・」や「無駄」と思っていては何も変わりはせぬ。秀久殿や利家殿の働きは、人の死にものぐるいの行動、意気込み、熱意、がむしゃらさ、強い意志といったものが天に、そして人に通ずることを改めて感じさせてくれるものじゃ。

「為せば成る 為さねば成らぬ何事も成らぬは人の 為さぬなりけり」

如何ほど離れたところに目指すところがあろうとも、どのような状況におかれていようとも、能力があろうとなかろうと、最初の一歩からすべては始まるのじゃ。その一歩の違いが後の千歩、万歩、億歩の違いにつながっていくのじゃ。

わしの昔語りが、貴殿の億歩につながることを願いつつ、仕舞いにさせていただこうかの。

貴殿の未来に幸あれ!

またどこかで会いたいものじゃな。

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