長谷川孝のブログマガジン

【武将】第36話 事業承継 其の2

前回の話を覚えておいでかの?秀吉殿の最大の失敗は「家督相続」、ということじゃったと思うが、今回はその
ことについて引き続き語らせてもらおうかの。

秀吉殿の死後、天下を二分した関ヶ原の戦いが起こることは貴殿もご承知のことであろう。その戦の後、天下人の座は徳川家康殿のものとなり、豊臣家はさらにその後の大坂の陣で滅ぼされてしまうこととなる。

では貴殿はこの豊臣家滅亡の要因は一体どこにあると思われる?

腹黒うて、手段を選ばぬ家康殿の存在がためであろうか?
あるいは豊臣家の後継ぎである秀頼殿が幼なすぎたためであろうか?
はたまた秀吉殿の側室で秀頼殿の母、淀殿の専横がためであろうか?

どれも一因ではあるかもしれぬが、決定的な要因ではないとわしは考えておる。

わしが考える最大の要因こそ「家督相続」、つまり「事業継承」の失敗じゃ。

事業継承とは、ただ単に我が子にその地位や財産を譲ることではない。己がおらぬとも今までどおり、あるいは
今まで以上に組織がしっかりと運営されていくことが重要なのじゃ。

そう考えると、後継者が我が子である必要性は実はどこにも見あたらぬ。我が子でなければならぬというのは、親のエゴでしかないのじゃ。己のエゴだけで組織の存続が危ぶまれるような意思決定をするトップは、それだけでトップ失格じゃ。

秀吉殿はこの時点ですでに失敗しておる。何が何でも我が子を豊臣家の後継ぎにしたかったのであろう。秀頼殿が生まれるより以前には、甥で養子の豊臣秀次殿が後継者に指名されておった。

じゃが秀頼殿が生まれた途端、秀次殿にあらぬ謀叛の嫌疑をかけ、切腹に追い込み、さらにその一族までを処刑してしまったのじゃ。

この時から豊臣家滅亡の足音が聞こえはじめておる。己のエゴ、私情で一度決めたことを翻すトップに誰が心からついていくであろうか。

リストラ(解雇)をする際は、本人に恨みを買わぬようにするのは大切じゃが、それよりも解雇されずに組織に残る者のことをより考えねばならぬ。不要になればあの者のようにわしもクビを切られる、明日は我が身か・・・と残った者に不安を抱かせてはならぬのじゃ。

次は我が身かと思わせてしまうと、人は己の保身が一番と考えるようになろう。未来に希望を持って働けなくなるであろう。共に働く仲間のはずが、己のこと、己の成果のみを考えて互いに牽制するようになるであろう。

そのような職場の雰囲気はどうなるか、やる気はどうなるか、申すまでもないじゃろうて。

また長くなってしもうたようじゃ。つづきはまた次回とさせてもらおうかの。

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