長谷川孝のブログマガジン

【武将】第29話 後継者の心構え

今回は徳川家康殿が語ったという後継者の心構えについて話を進めてみようかの。

家康殿曰わく「祖宗の創業というものは、その国家のために十分に熟慮したものである。そのうえ日夜心身を労して、子孫のために万世不易の法を立てたのである。ところが後継ぎは、その法を守ることができず、思うままに変更して、それで国家を誤らない者は稀だ。だから子孫はよく祖宗創業の艱難辛苦を忘れずに、祖宗の心をもって我が心とし、すでにできあがっているものを守ることによって国家を治めることを忠厚というのである。

人の上に立つほどの者はみな、人の正邪を見分けなければならぬ。表面だけを飾ってみても、人はついてこない。民が味方になってこない者は姦人だ。財を集め、人を苦しめるのは禍のもととなる。財を散らして人を集めるのが長久の基だ。たとえば、慈悲というものは草木の根っこのようなもので、人の和は花のようなものだ。よくその根を養えば、かならず美しい花が咲く。国を治める者は、よくこの意味を理解して、祖宗の成法を守り、奢ることなく、慈悲を万事の根本とすべきである」。

とかく後継者というものは、先代が偉大であればあるほど、先代との違いを示そうと躍起になるものじゃ。己の存在感を示そうと、既存の物事をむりやりに急激に変えようとしたりの。じゃがそれはあまりよろしいことではない。社内外の混乱を招く元になりかねん。

後継者がまず大事にすべきことは、己の存在感を示すことではない。家康殿の申されるように「人の和」を大事にすべきじゃ。社員にとってトップが変わるというのは、かなりの衝撃のはずじゃ。その揺れる気持ちをよく理解して、先代の意志を決してないがしろにすることなく、奢ることなく、慈悲をもって接し、今までどおり安心して働くことができるということを感じてもらわねばならん。

社員の和が乱れ、働く意欲が低下すると、最終的にお客様に影響が及ぶことになる。そうなればどういう結果になるかわかるじゃろう。世代交代は先代と後継者間だけの問題ではない。そこに集う者、皆の問題なのじゃ。

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